近年、シムレーシング業界でとても勢いを感じるメーカーの一つがMOZA Racingです。
最近では、新型DDベース「R16 Ultra」の発表に加え、モーションシステム「HMA150」を発表。
昨年には、各社フラッグシップモデルと肩を並べる25Nm帯を刷新し、トラック向けステアリングやレバースイッチ、フライトシミュレーター製品、ダッシュモニターなど、他メーカーにはない先駆的な商品展開。
さらに、アクティブペダルやアクティブシフターなど、次々と挑戦しています。
MOZAを見ていると、「ハンコンメーカー」というより、「シム環境を丸ごと作るメーカー」を目指しているように感じます。
「なんでも作る」という戦略
シムレーシングメーカーの多くは、
- ハンドルベース
- ステアリング
- ペダル
この3つを中心に展開しています。
もちろんほかにも周辺機器はありますが、MOZAほど幅広く手掛けているメーカーはありません。

Moza Racing Series
現在のMOZA製品を見るだけでも、
- DDベース
- ステアリング各種
- モニター付きステアリング
- ペダル
- アクティブペダル
- シフター
- アクティブシフター
- サイドブレーキ
- レバースイッチ
- ダッシュモニター
- モーションシステム
など、一つのブランドだけでシム環境のほとんどを揃えられるラインアップになっています。
ここまで来ると、「新製品を増やしている」というより、「新しいエコシステムを作ろうとしている」と言った方が近いのかもしれません。
単品性能だけでは選ばれない世界

PCの世界では、CPUはAMD x3D、GPUはNVIDIA、SSDはSamsungというように、それぞれ最も評価の高い製品を組み合わせる人が多くいます。
シムレーシングも同じです。
ベースはSimucube、ペダルはHeusinkveld、シフターはBDH、別メーカー…。
バラバラに自分に合う製品、好きなメーカーを組み合わせることも珍しくありません。
一方で、この方法には意外と手間もあります。
メーカーごとにドライバーや管理アプリをインストールし、ファームウェアを更新する。
ゲーム内設定も、デバイスごとにボタン設定やキャリブレーションを行う。
不具合が起きれば、「ゲームなのか、USBなのか、ドライバーなのか、それとも特定のデバイスなのか」を切り分ける必要があります。
このように、自由度が高い反面、環境が複雑になりやすいというデメリットがあります。
だからこそ各メーカーは、「エコシステム」を重視しています。
ベース、ペダル、シフターなどを同じメーカーで揃えることで、
- ドライバーや設定ソフトを共通化できる
- ボタン設定やキャリブレーションが統一される
- 製品同士の連携が取りやすい
- サポート窓口も一本化できる
という安心感があります。
もちろん、同一メーカーで揃えたからといって、すべてのトラブルがなくなるわけではありません。しかし、環境全体を一つのメーカーが設計・サポートしているという安心感は、多くのユーザーにとって大きなメリットになります。
そして、ここでMOZAが面白いのは、そのエコシステムの広さです。
他メーカーもベース・ペダル・シフターといった基本構成ではエコシステムを展開しています。
しかしMOZAは、それだけに留まりません。
- トラック用ステアリング。
- レバースイッチ。(ウインカー・ワイパー等)
- ダッシュディスプレイ
- アクティブシフター(フライトシミュレーター兼用)
- アクティブペダル。
- そしてモーションシステム。
「シム環境で使えそうなものは、とりあえず自社で作ってみる。」
そんな勢いすら感じます。
ベースの選択肢も豊富
エコシステムというと、対応ステアリングやペダルの多さに目が向きます。しかしMOZAの場合、まず入口となるホイールベース自体の選択肢が非常に多いです。
最初はR3やR5の入門セットから始める。
物足りなくなればR9、R12、R16へ進む。
さらに本格的な環境を求めるなら、R21 Ultra、R25 Ultraを選ぶ。
ユーザーの予算やコックピットの剛性、求めるFFBの強さに合わせて、同じメーカー内で段階的に選択できます。
しかも、ステアリングや一部の周辺機器を引き継ぎながらベースだけを更新できるので、ユーザーとしては最初の一台を買いやすくなります。
メーカー側から見れば囲い込みですが、ユーザー側から見れば、
今の予算に合った製品から始めて、あとから同じ環境の中で上位モデルへ進める
という安心感になります。
ここはFanatecも昔から強かった部分ですが、MOZAはさらに細かいトルク区分で展開しています。
MOZAの本当の強みは「入口の数」
MOZAは、単に製品数が多いだけではありません。
- 予算別に多数のホイールベースを用意する
- GT、フォーミュラ、トラック向けのステアリングを用意する
- ペダルやシフター、レバースイッチまで揃える
- フライトシムやモーションへも広げる
というように、ユーザーがMOZAのエコシステムへ入る入口そのものが多いのだと思います。
普通は、最初にホイールベースを選び、そのメーカーのエコシステムへ入ります。
ところがMOZAでは、
- 安価なDDセットから入る人
- トラックシム用ステアリングから興味を持つ人
- レバースイッチが欲しい人
- フライトシム製品からMOZAを知る人
- アクティブペダルやモーションに関心を持つ人
など、従来とは違う入口からユーザーを呼び込めます。
これが「なんでも作る」ことの強さになると思います。
現状はまだ「コストパフォーマンス」の評価が中心
MOZAは価格面で市場に大きなインパクトを与えてきました。
一方で、FFB品質だけを見ると、「価格を考えれば非常に良い」という評価が多く、
FFBが良いから選ばれる。ペダルの踏み心地が良いから選ばれる。と言う評価はあまり聞こえません。
個人的なイメージでは、
- Simucube:最高性能
- Fanatec:総合バランス
- Simagic:高性能と価格のバランス
- Logitech・Thrustmaster:大手ブランド
- MOZA:コストパフォーマンス
という位置付けでした。
もちろん人によって評価は異なりますが、「安いから選ばれるメーカー」という印象を持っている方も少なくないと思います。
Ultraシリーズは転換点になるか
しかし昨年より発売されているUltraシリーズの海外レビューなどを見ていると、MOZAは単なる価格競争から一歩先へ進んだという感じがします。R21 Ultra, R25 Ultraに続き、このたび、R16 Ultraの展開を発表しました。
今までは格安モデルから商品展開をしていたけど、ハイエンドグレードからの商品展開。
製品の品質にも妥協しない。そんなイメージができてきました。
これらを見る限り、「安いメーカー」ではなく、「性能でも選ばれるメーカー」を目指しているように感じます。
未来のエコシステムを象徴する存在になれるか
MOZAのそれぞれの製品を見ると、まだまだライバルメーカーにかなっていない面もあると思います。
展示などでしか触っていないので自分の評価は差し控えますが、多くの海外レビューなどを見ていると、
性能で飛びぬけたところはあまりないように思われます。
ただ、「全部作る」という挑戦を続けている、この姿勢はとても評価できると思います。他社にはない魅力を持つブランドとして成長していると感じます。正直羨ましいレベルです!
未来のシムレーシング環境そのものを少しずつ組み立てているようにも感じます。
「なんでも作る」という挑戦。
その先にある新しいエコシステムが、MOZAというブランドを象徴する存在になる日が来るのか。
今後の展開が楽しみです。
このたび発表された新製品
改めて、今回の新製品を振り返ってみてみます。
・R16 Ultra Wheel Base
R16 Ultraは、最大16Nmのトルクを持つ新型DDホイールベースです。

MOZAはすでにUltraシリーズとして、R21 Ultra、R25 Ultraを展開しており、今回のR16 Ultraによって、Ultraシリーズをより多くのユーザーが選びやすいトルク帯まで広げてきました。
従来のMOZA製ホイールベースは、価格の安さやラインアップの豊富さが大きな魅力でした。一方で、FFBの滑らかさや細かな情報量では、上位メーカーに一歩譲るという評価も少なくありませんでした。
Ultraシリーズでは、単純な最大トルクだけでなく、モーター設計や制御アルゴリズムを含めたFFB品質の向上が重視されています。
R25 Ultraについては、まだレビュー数こそ多くありませんが、従来モデルよりも滑らかで、細かな情報を感じ取りやすくなったという評価も見られます。
R16 Ultraが同じ方向性のフィーリングを受け継いでいるのであれば、MOZAにとって重要なモデルになるかもしれません。
16Nm帯は、中級者クラス。入門者が行きついて最終にしてもいいくらいのトルクレンジです。
さらに上を狙える21Nm・25Nmも控えていますが、個人的にレースシムに必要なトルクは十分だと思います。
これ以上のトルクを狙うのは、趣味の世界・・・っとw
これまで「価格の安さ」で選ばれることが多かったMOZAが、FFBの品質そのものでも選ばれるようになるのか。
今の商品展開を考えると、10万円を切ることは間違いないかなと思います。
他のエコシステムにも支えられて、初心者にもやさしい中級者用ベースになるのでは。本当の意味でコストパフォーマンスの高い、これを買っとけば間違いないという製品になるのでは?と期待してしまいますね。
・HMA150 Motion System
もう一つの新製品が、4本のアクチュエーターで構成される「HMA150 Motion System」です。
今回のHMA150は

- 150mmストローク
- 300mm/sの高速動作
- 最大1G加速度
- 150Hzハプティック振動
- 48Vの低電圧設計
- コントローラー内蔵で配線を簡素化
という仕様で、家庭向けとしてはかなり本格的です。
価格は税込549,890円。(株式会社innovatorさん発表)
MOZAなら、もう少し思い切った価格で登場するのではないかと予想していましたが、実際にはモーションシステムとして、至極当然、これくらいかかるよね~みたいな価格帯でした。
書かれている性能を見ると、決して高いわけではありませんが、気軽に導入できる価格でもありません。
しかし、この製品で重要なのは、値段ではなく、ホイールベースやステアリング、ペダルを展開してきたメーカーが、ついにコックピット全体を動かすモーションシステムまで手掛けたことに意味があります。
これまでモーションシステムは、専門メーカーの製品を別途購入し、対応するコックピットや制御ソフトを組み合わせて構築するものという印象がありました。
MOZAが自社エコシステムの中へモーションを加えることで、将来的には、
- ホイールベース
- アクティブペダル
- アクティブシフター
- ダッシュディスプレイ
- モーションシステム
までを、同じメーカーの製品とソフトウェアで管理できる環境が生まれる可能性があります。
現時点で、どこまで各製品が連携するのかは分かりません。
それでも、MOZAが目指している「シム環境を丸ごと作るメーカー」という方向性を、最も分かりやすく示した製品ではないでしょうか。

【コメント】 あなたのSimLifeの感想やアイデアもぜひ。