はじめに
2025年のレースシム界は、ここ最近ではとてもまれに見る“激変の年”だったと思います。
年初から、ラリー界では激震が走り、
年末に向けての新作・リリースラッシュは、明暗分かれるドラマあり。
・地道に着実にアップデートを重ねるもの
・大々的なプロモートをもとに攻勢を強めるもの
・開発自体を隠密にし、華々しくデビューするもの
この一年間、各タイトルが自分の居場所を探し、それぞれが進む道を決めて進めてきました。
SteamDB の同時接続数チャートを見ると、そのタイトルの息吹が聞こえます。
息吹に呼応するようにプレイヤーが動いた記録です。
“どんなプレイヤーが現れ、どんなプレーヤーが残り、どんなプレイヤーが離れたのか”
2025年の締めくくりとして、各タイトルの思いを振り返り見てみましょう。
※LockeFactoryの主観に基づくものとなっております。
なんとな~くおススメ順になってるようななってないような。 ソコハキニセズお読みください。
■ Le Mans Ultimate(LMU)
2025年、今年一番の成長株といえるLMU。
“苦労したローンチから、一躍メインストリームへ”
LMUといえば、FIA World Endurance Championship(FIA世界耐久選手権)通所「WEC」公認の
本格的耐久レースを再現した公式ゲームとして誕生。
2024年初頭、アーリーアクセスとしてローンチした時の状況を覚えているでしょうか。
当時は「物理は良いが、重い」「バグが多い」「ロード時間が長い」「未成熟」といった声が多く、
正直なところ“伸びる未来がまだ見えないスタート”でした。

ところが、その後の度重なる修正により、信頼をゆっくり勝ち得ていった名作です。
まずは、安定化。公式ゲームとして、遊びの幅は狭い分、その中で、まずはきっちり遊べるように改善。
狭く深くを目指したように思う序盤。 確実にコア層の心を手にしていきました。
安定化が落ち着いたころから、ハンドリング改善、UI刷新、コンテンツ拡充、
RaceControl.ggによるWEC公式イベントとの連携。
次々にアップデートを重ね、この1年間ですっかり王者の風格までまとった気がします。
*RaceControl.gg = LMUの公式オンラインプラットフォーム
ACCもそうですが、公式ソフトとしてジャンルを絞って物理挙動を追及するのは、
突き詰めやすいメリットがあります。
もともと優れた物理エンジンのrFactorの後継。
それをさらに、特化して煮詰めたものになります。
SteamDBの右肩上がりは、その努力の結果そのものです。
右肩上がりで底値が上がるということは、「新しい人が入る」だけでなく、
「やめない人が増えている」という意味。
レースプラットフォームとして、理想の形を示しています。
◆ 2025年のLMUが示したもの
“競技系シムは、アップデートとイベントが命。公式による公平なプラットフォーム”
iRacingモデルに寄せた RaceControl.gg の存在が、公式レース文化を一気に広げました。
ACCの覇権に真っ向から挑めるタイトルがついに登場した、そんな一年でした。
今の右肩上がりのグラフ図を見ると、向かうところ敵なしと言った感もあります。
本格的にレースをしてみたい。リアル挙動とは!?と思われている方は是非、お試しください。
〇こんな方にお勧め
・耐久レースに興味がある。
・ストイックに運転にいそしみたい
〇こんな方には微妙
・遊び要素は少ない
・カジュアルに楽しみたい
※関連記事:アーリーアクセスの功罪
■ Assetto Corsa EVO(ACE)
華々しいローンチから、静かな“再構築フェーズへ”
ACEはローンチ前の期待が大きすぎた反動で、初期評価が大変なことになったタイトルです。
私も、期待しすぎて大きく失望した記憶があります。
ACCは公式レースとしての基盤を築いていたことで、
当初は、本来のACの後継として、ACEでは大衆を取り込む方向性に舵を切ったと思われます。
ローンチ直後には、「新時代のACだ!」・「神挙動!」そんな言葉が飛び交った束の間・・・
「なんか違う…」「旧作より扱えない」「バグだらけ」「遊ぶ要素ないね」
という声が並んでいました。
ユーザーからは、アーリー公開が早すぎた。という認識で概ね一致していました。
目指すところが見えにくい。本格レースシムなのか、カジュアルなオープンワールドなのか。
30台そこそこでクローズ空間のレースと、オープンワールドは根本的に違うもの。
アーリーアクセスを開始したものの、開発ロードマップは思ったようにはいかず、
事態は悪い方向へと転がっていくようでした。
実際この一年迷走していたようにも見えました。
多くの方が失望を味わったと思いますが,それでもACの復活を心底求めてる人も多数。
その声に応えるように,地道にアップデートを進めています。
重さの緩和、挙動の安定、FFBの洗練,そして本来の立ち位置に戻る優先順位の変更
0.4になって,ACEは、ようやく “アーリーアクセスの土台に乗った”
そんな思いのする一年でした。
大衆を取り込む機能よりも,まずは安定した遊べる要素とレースが行えること。
スタート地点に立つこと。0.4の発表でやっと土台に乗ったと思います。
皆さん,これからですよ!?

SteamDBチャートをみると,初期ローンチ直後の25752という同時接続。驚異の数値。
どれだけ期待されていたか。どれだけの人が失望してしまったのか、よくわかるグラフ図になっています。
以降,どん底で横ばいに見えますが、実は数百レベルではアクセスがあります。
この“横ばい”はむしろよく頑張ったといいたいです。
あれだけ批判された初期評価のあとで最低限の人口が維持されているのは、ACへの愛と
それに答える改善を積み重ねてきた証拠ですから。
昨今、グランツーリスモやF1シリーズなどのカジュアルゲームからリアル系レースシムに流入する数が
軒並み増えていると感じます。
この波に乗っていけるか。これからのアップデートに期待したいですね。
◆ 2025年のACEが示したもの
ACEは 「これから評価されるタイトル」 だと思います。
期待外れの烙印から、どう立ち直るか。
Kunosは、ACCの開発中断、ACEへ全力で舵を切ると発表しました。
そこに登場した0.4version バグ修正、コミュニティプラットフォームの追加、
優先度が喫緊の今やらなければならないことをやったと思います。
やっと遊べる環境ができた。
そして、ACの強みはやはりMODにあると思います。
ACのようにはならないと思うけど,正規のMOD開発者が開発を始めれば,
この一年の停滞分を一気に回収する可能性も十分あります。
LockeFactoryとしては、ACEを推進していこうと考えています。
〇こんな方にお勧め
・多ジャンルで楽しみたい。
・ストイックに運転にいそしみたい
・一緒に成長を歩んでいきたい
〇こんな方には微妙
・遊び要素はまだ少ない
・カジュアルに楽しみたい
※関連記事:アーリーアクセスの功罪
■ Assetto Corsa Competizione(ACC)
長すぎる安定期。“成熟したコミュニティの恐ろしさ”
ACCは2020〜2025の5年間で、もっとも安定して人口を維持したタイトルです。
超リアル系レーシングゲームと言ってもいい。リアル系レースシムの代表格として照会されることも多い作品です。
本作は、使用車両をGTカーレースに絞ってブランパンGT(現GTワールドチャレンジ)の公式ソフトとして制作されました。GTレースといえばACC。そんな風に言われるようにもなりました。
ローンチ直後は、バグも多く、UnRealEngineとの同期もとれず、
「重い」「カクカク」散々な評価でしたが、上記LMUと同様、誠実なアップデートを重ね、今に至ります。
大型DLCのたびに必ず山ができる、LFMの定着で毎日レースが成立。
LFMプラットフォームの中で、ユーザーの自立心向上。
LMUが大躍進で伸びても、ACCは減っていない。
「GT3ならACCでいい」という安心感。 これは普通ではない。
*LFM = LowFuelMotorsports(外部のコミュニティ・オンラインレースプラットフォーム)

多くのレースシムが、
ローンチ → 盛り上がる → 落ちる。という周期を繰り返す中、ACCだけは 「落ちない」。
これは そこで生活するかのように育った“文化になったタイトル” の特徴です。
◆ 2025年のACCが示したもの
ACCはもう“ただのゲーム”ではなく、
“練習とレースのプラットフォーム” となっていると言えます。
2025年11月末,ACCの開発縮小が発表されました。
長らくユーザーに支えられてきたレースプラットフォームとして完成したACCですが,
プラットフォームはLFMなどの外部依存。収益構造になっていない。
LMUのRaceControl.ggのようにサブスクの収益があるわけではなく,
現代,ソフトを売るだけでは収益に繋がりにくい。
話はわかりますが,さみしい思いもしますね。
〇こんな方にお勧め
・GTレースに興味がある。
・ストイックに運転にいそしみたい
〇こんな方には微妙
・遊び要素は少ない
・カジュアルに楽しみたい
・数年後,サービス終了の可能性も。
※関連記事:Low Fuel Motersportとは?
■ Automobilista 2(AMS2)
静かに火がつき、静かに燃え広がり続けた一年
AMS2は“長い誤解”のトンネルを抜けたタイトルです。
AMS2は,かのrFactor2の時代に,ProjectCars2のエンジンのライセンスを受け、
自社エンジンとして改良し、磨きをかけ、独自の文化を築き上げた作品です。
DLC拡張がメインのソフトですが,コースの量・車種の量ともに他作の追従を許さない
レベルにまで達しています。(MOD除く)
最初期は
「挙動が遊びっぽい」「ふわふわしてる」「ピーキーで扱いにくい」
と言われ続けてきました。
じきに,癖のある挙動だが味がある。
コースの種類と車種の豊富さ,リアル挙動のバランス。
大きく当たりはしませんでしたが,コアなユーザーは残りました。

Reizaの地道に仕上げる開発は,今年,大きく認められる時が来ました。
今年の大規模アップデートにて,
・タイヤモデル刷新
・サスペンションの挙動改善
・FFBの再構築
・車種ごとの性格が明確に
・LFM対応で一気に人口増加
気がつくと、「なんかAMS2良くなってない?」という声が増え、
大きく盛り上がってきたというのが現状です。
レースシム人口は着実に増え続けています。
ACC-LFM と続いたように,レースプラットフォームの需要は高まっています。
UI自体は古い設計で,初心者の流入は限定的ですが,
LFMに対応したことで,多ジャンル・リアル挙動を備え、コミュニティー・プラットフォームも
機能する作品に生まれ変わっています。
◆[注目] Reizaは,2026年に向けて,開発チーム1つ作るんじゃないかというレベルの
大規模人員募集を始めました。
2025年の成功を受けての動きだと思います。
推測ですが,旧AMS2からの脱皮でカジュアル層の取り込みに力を入れるのではないかと感じています。
圧倒的な多数。大衆と言われる、GT7に代表されるカジュアルからのステップアップ層。
現在、その波がどのシムのユーザー数をも押し上げています。
どこのシムも,この層の取り込みに力を入れる事でしょう。
AMS2は今年、「実った成功」の象徴だったと言えると思います。
UI設計は古めなので、初心者にお勧めはしにくいですが、
癖のある挙動もFFB特性も、慣れてしまえば味がある(そうです。)
〇こんな方にお勧め
・フォーミュラからロードカーまで多ジャンルで楽しみたい。
・ストイックに運転にいそしみたい
〇こんな方には微妙
・遊び要素はほとんどない
・カジュアルに楽しみたい
・UIは簡単な方が良い
■ RENNSPORT(RENN)
低空飛行でも消えない、特殊なタイトル
RENNSPORTは2024〜2025にかけて話題が多かったタイトルです。
・UE5ベースのグラフィック
・物理刷新の試み
・BMW・ESL などの企業と提携
・eSports大会を中心に展開
しかし、一般層には刺さりづらく、“eSportsのためのシム”という立ち位置のみが強くなっています。

RENNSPORTは、EpicGames出身でSteamだけの統計では正確なものではありませんが、
指標としては十分で、SteamDBチャートを見る限り、常に低いながら一定数を維持しており、
これは「大会需要だけで回っている」と思われる動きです。
ただ,開発側の思いはとても強いものを感じます。
正式リリースを迎えた2025年11月13日以降だけでみても,
7~10日に一度の超ハイペースでアップデートパッチを行い,
ユーザーの声に真摯に向き合っているところが見えます。
eSportsに焦点を当てたソフト。
同じレースでも,プラットフォームの考え方が違う独自性を持っています。
◆ 2025年のRENNSPORTが示したもの
RENNは 「消えないけど増えない」 タイトルです。
役割がはっきりしすぎていて、万人向けにはならないタイプ。
ただ、eSportsシーンが続く限りプラットフォームとして生き残ると思います。
頻繁にアップデートをしているので,いつか華開くかもしれませんね。
〇こんな方にお勧め
・eSportsとして対戦を単純に楽しみたい。
〇こんな方には微妙
・遊び要素はほとんどない
・カジュアルに楽しみたい
※関連記事:RENNSPORTの正式リリース間近:PS/XBOXにも登場
■ RaceRoom Racing Experience(R3E)
“静かに底力を見せ続けた古参タイトル”
R3Eは新規プレイヤーこそ多くはありませんが、
長年の常連客と、地味に増え続ける復帰勢に支えられた独自の安定感 を持つタイトルです。
SteamDBのチャートを見ると、
減っていくどころか 2024年後半から底値がじわじわ上昇 しており、
“静かに息を吹き返している” とも言える動きをしています。

車両音の迫力や、独特なサスペンション挙動は今も根強いファンを持ち、
この“乗り味”こそがR3E最大の魅力。
UIや設計は古さが残っているものの、
常連層の結束力が強く、コミュニティ主導のイベントも盛ん です。
“派手さはないけれど、決して消えないソフト”。
それが今のR3Eだと感じます。
個人的感覚ですが,RRREの乗り味は好きですね。
ちょっと極端に表現されているところもありますが,
車の状態がわかりやすく,初心者に優しいと感じます。
内容までは未確認ですが,公式系大会が続いているようです。
時折見かける情報から,常連層の結束が強いという気がしますね。
〇こんな方にお勧め
・基本無料(無料で遊べる範囲はあまりおすすめできない。)
・リアル挙動ソフトは初めて。
〇こんな方には微妙
・遊び要素はほとんどない
・ゲームは買い切りだ。
・カジュアルに楽しみたい
■ EA F1シリーズ
“別軸の王者”として2025年も健在
あの。世界最高峰の四輪モータースポーツ Formula1 の公式ゲーム。
当サイトは,リアル(挙動)系レースソフトを主に扱うこととしていますが,
F1シリーズは,フィーリングをリアルに仕上げたどちらかと言うとカジュアル系のソフトです。
毎年フルプライスで新作発売する。というスタイルのため,
同じシリーズであっても,単作での同時接続数はあてになりません。
だけど,さすがのF1公式ゲーム。F1の世界観を忠実にリアルに再現し,
キャリアモードから,eSportsまで,完成度が高いソフトです。
毎年新作が出るというのは,出せる強さがあるということです。
キャリアモードの人気,eSports大会の規模,世界最高峰の車を操る。カジュアル層の入口

毎作,SteamDBでも、新作発売と同時に爆発的に伸び、シーズンオフとともに
収束する。まるで息継ぎしているような動きをしていますが,
毎年新作発売ということで,挙動が毎年変わるという,評価のしにくい
作品になっています。
2023では,ハンコン勢にも気に入られる挙動でしたが24の挙動は不評で
同接グラフも落ち込みましたが,25になって,復活を遂げました。

CodeMastersは、毎年新製品を発売するモデルでしたが、来年2026年は新作を出さず、
この「F1 25」のDLC拡張で行うと発表しました。
25での人気をつなぎ止めたいという思いからかもしれません。
グラフを見ても、全く減っていない。この状況を鑑みて、英断だと思います。
昨今,カジュアル層から,リアルを求めて来る層が増え続けています。
PSのグランツーリスモ,このF1シリーズは,カジュアルレースゲームとしては
リアル挙動寄りで,リアルレースシムへの橋渡しとしての役目も担っていると思います。
グランツーリスモ・F1シリーズを応援することは,将来のリアル系レースシムの
盛り上がりに寄与すると思っていますので,しっかり取り上げます。
特にFomula1公式という看板と世界観。“公式が支える層”は強く、
このシリーズがある限りF1ファンは流入し続けると思います。
動きはカジュアルな感じですが、リアルと言っていい没入感。
PCソフトで何がいい
?と初めての方に聞かれたら、これを推すかもしれません。
〇こんな方にお勧め
・F1の世界観を味わいたい
・カジュアルにも遊べる本格的レースゲームがしたい
・ソロとオンラインそれぞれ楽しみたい
〇こんな方には微妙
・ストイックに走りを極めたい
・毎年買うのはいやだ
※関連記事:【速報】EA SPORTS F1 25 がついに50%オフ
■ Project Motor Racing(PMR)
2025年。今年,一番盛り上げてくれた作品。と,個人的には思っています。
夏より大々的なプロモーション。目指すべき姿を表現し,とんでもないものが出る。
究極のリアル挙動・コミュニティプラットフォームの統合,夢が詰まった作品。
そう思わせてくれた作品です。
おそらくですが,ACR,RENNSPORTなどのリリース日を前倒しさせたのではないかと
思える影響力がありました。
しかし,蓋を開けてみると,最も苦しんだタイトルになってしまいました。
おそらく営業部門と技術開発部門のすりあわせがうまくいっていなかったのではと
思われます。 返金祭り,低評価の連鎖に価格設定トラブル。
SteamDBグラフは急落。同時接続100人を切るレベル・・・。
想定していた開発費の調達は頓挫し,未来へも暗礁に乗り上げた状態になってしまいました。

そして,レイオフの発表・・・。 >関連記事:ProjectMotorRacingレイオフ
ただ,救いなのは,完全に終わりではないこと。
規模は縮小するけど,開発は継続。引き続き改善に集中すると明言しました。
PMRは“終わりではなく、立て直しの始まり”。
Project CARS系譜としての魅力は残っており、
長期的に見れば復活の余地はあります。
まだ未来はある。そう信じて,来年以降も注目していきたいと思います。
〇こんな方にお勧め
・PMRを応援したい人。
〇こんな方には微妙
・完成品が欲しい
■ラリーシムについて語ろう「2025年」
EAWRC喪失とACR台頭が象徴した“二つの未来”
2025年のラリー界は、公式タイトルの喪失と、新たな勢力の急成長という対照的な出来事が起きました。
EA Sports WRCは、挙動やステージ品質が高く評価されながらも、企業規模と市場規模のミスマッチによって継続を断念し、開発チームは縮小されました。一方で、Assetto Corsa Rally(ACR)は、わずかバージョン0.1の段階にもかかわらず、熱量の高いコミュニティを背景に急速に存在感を高めています。
この二つの流れは、ラリーシムというジャンルが抱える構造的な課題と、そこに芽生えつつある新しい可能性を象徴しているように思います。
■ EA Sports WRC(EAWRC)
EA Sports WRCは、長年WRCシリーズを手掛けてきたKT Racingからバトンを受け継いだ大型タイトルでした。
あのDirtRally2を排出したCodeMastersが製作したという前評判。そして、その作品の出来は、物理挙動はシリーズ最高レベルと評され、ステージ構成も実在コースをリアル重視で丁寧に作られていました。
しかし、その評価とは裏腹に、タイトルとしての寿命はとても短いものとなりました。
巨大企業EAの期待する売上ラインが、ラリーというジャンルの市場規模と合っていなかったことに尽きます。
従来のDiRT Rally 2.0 の長寿成功が、EAのラリーに対する期待を必要以上に押し上げた面もあると思います。
しかし、ラリーは、レースゲームの中でもさらにニッチなジャンル。
そして、ライセンスフィーのかかる公式WRCとしての発売。
リアルコース再現などの開発費の高騰。EAとしては予想外の利益率だったんでしょう。
そして・・・
「EAは利益率が取れないIPを切り捨て、FIFAやUFCのような巨大ブランドに集中する戦略へ」かわりました。
結果として、品質は高かったにもかかわらず、収益モデルが噛み合わず、チーム解散という結末になりました。
KTRacingのWRCが、公式ゲームとしても、細々とでも続いてこれたのは、運営モデルが「大きな利益は出ないが、持続可能な範囲で丁寧に続ける」という設計だったからでしょう。
ラリーシム市場は、他ジャンルと比べるとどうしても小規模です。
大きな予算で開発を行うのは厳しく、シェアが限られた市場で、
EAの大規模投資を回収できるほどの売上を出すのは難しい状況でした。
EAじゃなければ・・という声が多数上がったのも頷けます。

悲しい物語となってしましましたが、ソフトとしてはとても優秀なソフトです。
サポートも切れた状態で、風前の灯ともいえる状況ですが、
プレイは普通に可能で、今でも遊んでいる方がいます。
ステージの質やドライビング体験そのものは今も十分楽しめる完成度です。
Momentsなどの課題提供は無くなってしまいましたが、走行を楽しむという点ではまだまだ現役です。
突如沸いた次に書くACRと比較しても、公式WRCゲーム。非公式ラリーゲーム。
として両者存続出来た未来もあったのでは・・・と感じます。
〇こんな方にお勧め (セール限定)
・ラリーに興味がある人
・
〇こんな方には微妙
・ゲームとしてのサポートが必要な人
・
■ Assetto Corsa Rally(ACR)
突如現れた新人。
2025年10月、突如発表され、翌月11月にアーリーアクセスとしてリリースされた、純新作ソフト。
ラリー界の話題を一気に根こそぎ持っていった感じがします。
リリースされてまだ1か月ですが、2025年のラリー界でもっとも勢いがあったと言えるのではないでしょうか。
あの、「AssettoCorsaの冠名」と「物理エンジン」を受け、別会社が製作した作品。
聞いてないよ!? みたいな声がたくさん。
しかもその別会社(Supernova Games Studios)は名門出身が複数いるとされています。
間違いなくAssettoCorsa の Rally(ACR)でした。
まだバージョン0.1の段階というACRですが、挙動の精密さ、コース設計の丁寧さ、また、
数々のコミュニティと連携をとって開発していくという距離感などが高く評価されています。
これからじっくり作り上げていくとのことですが、0.1の出来から期待度が高まっています。

SteamDBを見ると、グラフは右肩下がりのように見えますが、ラリーと言うニッチなジャンル、アーリーでコンテンツ不足の状態で、いまだに1000人以上の同時接続を保てるのは、すごいを通り越してます。
開発開始は4年前にさかのぼるそうです。 > 関連記事:AssettoCorsaRally登場
なぜこのタイミングに発表されたのか。なぜ今まで隠されてきたのか。
(※これは私の想像の範囲です)
・EAWRCが急遽早期に終了した。
・ProjectMotorRacingのプロモートを受け、その前に出したかった。
・SimEXPOのタイミング
・開発資金の補充が必要だった。
どれもありそうでなさそうで。
もしかしたら、公式WRCのライセンスを狙っていたかもしれない。
EAWRCがライセンスを手放すことになり、KTが再度取得したためタイミングを見失った可能性も。
こんな大作が、突然発表されて、1か月後にリリース開始というのはなかなか例がないので、
そこにどんなドラマがあったのだろうと、ドラマ好きな私は思ってしまいます。
かくして、とても未来が期待されることとなったACR。
実際に触ってみて、あぁ、アセコルがラリーになるとこんな感じなんだね!と
車の挙動がほんとにリアルに感じます。 曲がらなくて当たり前のグラベル路面。
そこを曲げるには丁寧な荷重と操作が必要。
まだまだ動きに不思議な所はあるけど、これはすごい。と思いました。
2027年には、KTRacingが新しい公式WRCを出す予定です。
当面、ACRが公式ソフトになることはなさそうなので、思い切ってガンガンやってほしいですね♪
〇こんな方にお勧め (セール限定)
・本気でラリーを極めたい人
・0.1バージョンでも気にしない人
・ストイックに走りを極めたい
〇こんな方には微妙
・カジュアルには走れません。
・ゲームとしてはまだ発展途上
■ まとめ:レースシムは「やりたいことで選ぶ時代」へ
2025年のレースシム界は、もはや「何が最強か?」ではなく、
「何がしたいかでタイトルを選ぶ時代」になってきたと思います。
物理挙動それぞれも,各社の味が出て良い悪いだけでは答えにくいレベルまで達してきました。
競技として走りたい → LMU / ACC / RENN
多ジャンルで遊びたい → AMS2 / ACE / GT7
カジュアルとリアルの両立 → F1シリーズ / GT7
世界観・公式もので遊びたい → F1シリーズ , LMU , ACC , EAWRC
独自文化に浸りたい → R3E
復活を願いたい → PMR
ラリー界の新星 → ACR (ごめん・こんな分け方で^^;)
目的が違えば選ぶソフトも違う。
挙動の違いも,好みで変わるレベルになってきています。
■ おわりに
レースシム界は、数年ごとに“波”があるように思います。
2024~2025は,世代交代,新世代シムへの過渡期状態にあると思います。
究極の物理特性を求めて
・rFactorからLe Mans Ultimate へ
大衆を取り込むシムを目指して
・AssettoCorsa から AssettoCorsaEVO へ
新しい派遣を目指して
・ProjectCars から ProjectMotorRacing へ
各タイトルが自分の次の場所を目指して進む一年でした。
来年はどんな動きが出てくるのか。
iRacingの確立されたプラットフォームを目指したような動き。
それぞれここで紹介するソフトは,ゲームとしての存在の中でのプラットフォーム。
各社,レースという舞台の提示の仕方こそ違えど,
舞台の中で成長するユーザーを描こうとしているように思います。
年末らしい総まとめとして、
2025年のレースシム界を振り返る手助けになれば嬉しいです。
そして、2026年。さらなる盛り上がりを期待しています。
■ 巻末特集 人口爆発
「カジュアルからリアルへ」
─2025年、静かに起きてる人口流入の波
2025年のレースシム界は、各タイトルの盛衰が注目された一年でしたが、
この業界全体をもう一段広い視点で眺めてみると、
“水面下で進むはっきりとした変化”が見えてきます。
それが、
カジュアル層からリアルシムへ流れ込む明確な人口移動
です。
これは大袈裟なブームとは少し違うものの、
レースシムというニッチな世界の中では、確実に“静かな拡大期”が訪れていると感じます。
以下は、その背景にあるいくつかの大きな流れです。
1.カジュアルゲームのリアル志向化が、自然な“導線”を生んだ
グランツーリスモ7やF1シリーズは、
今では「気軽に遊べるリアルゲーム」という絶妙な位置に進化しました。
- 難しすぎない
- でも挙動は本格的
- ハンコンとの相性も良い
このバランスが、
「もっと上を目指したい」
「本物に近い世界に触れたい」
という層をシムへ押し上げる“踏み台”・”跳ね台”の役目を果たしています。
従来のように、いきなりPCシムに飛び込む必要はなく、
“ステップアップの階段”が自然に形作られる時代となりました。
2.レーシング機器市場の急成長
Fanatec・Moza・Asetek・Simagic…
ハンコンメーカーはここ数年で一気に増えました。
さらに東京ゲームショーでは、
“シムレーシング専用の大型ブース”が確保されるほどの存在感。
これはつまり、
レースシムが、周辺機器を中心に“産業として成立し始めた”
ということです。
ハードが増えれば、触れる人口も増え、
触れる人口が増えれば、リアルを求める人も増える。
その相乗効果が、今の安定した人口増加を支えています。
3.SNSによる“シム環境の可視化”が憧れを生んだ
ここ数年で最も大きな変化かもしれません。
- 三画面の迫力
- モーションリグの動き
- 実車そっくりの視点映像
- ハンコンのしなりや反力
AI動画が、これ本物!? と思われるように、
ゲーム画面が、これ本物!?と思われるレベルまで上がってきています。
かつては“知る人ぞ知る世界”だったシム環境が、
SNSによって日常的に流れ込んでくる時代になりました。
これが新たな動機をつくり、
「あれ、ちょっと本物みたい」
「自分もやってみたい」
という好奇心を刺激し、
気がつけば“リアル系シムの扉”が開いている。
そんな流れが、広がっています。
4.iRacing・LFM・RaceControlの普及で“競技文化”が一般化した
レースシムは今、“ゲーム”ではなく“競技の場”になりつつあります。
- ランキング
- セーフティレーティング
- オンラインレースの定時開催
- 同レベル同士のマッチング
これらが一般ユーザーにも浸透し、
「練習して上達する文化」 が当たり前のようになりました。
GT7やF1シリーズで腕を磨いた人が、
より高い競技性を求めてリアルなシム界に流れ込む。
その流れは、ますます増しているように感じます。データで見ると確実ですね。
5.“ニッチの中のブーム”という、今のシム界の特性
レースシム人口は決して爆発的には増えません。
しかし、SteamDBの同接推移を見ると明らかなように、
底値が上がり続けているタイトルが多い
これは流動的に“人が入っては抜ける”ではなく、
「入ってきた人が残る」 という現象です。 新たに入る人は流入組の比率が高い。
ゲームと言うジャンル(大衆)から、シミュレーションというジャンルへ。
ニッチの世界では確実に熱量が高まっています。
これが2025年のレースシム界を象徴する出来事のひとつだと感じます。
■ 巻末の総括
2025年、レースシム界はタイトルごとの明暗が語られがちですが、
その背景では、もっと大きな“時代の流れ”が動いていました。
- カジュアルからリアルへ
- ゲームから競技へ
- ハードウェアから文化へ
- そして、シムから“自分の場所”へ
多くのプレイヤーが階段を上り、
自分に合ったタイトルへたどり着く。
この“静かな人口流入”こそ、
今年のレースシム界を支えた、最も大きな追い風だったと思います。
来年、この流れがどのように形になるのか。
新しいタイトルが生まれるのか。
既存の作品がどんな進化を見せるのか。
レースシム界は、まだまだ面白くなっていくはずです。


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